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天上天下唯我独尊

 今年も春の陽気の訪れとともに花まつりの日を迎えました。

 「花まつり」とは、お釈迦さまのご生誕をお祝いする仏教行事のことです。

 ところで、お釈迦様の逸話として有名な話があります。諸説ありますが、生れてすぐに立ち上がり,四方を見回して七歩歩いて右手を上に左手を下に指し,「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)三界皆苦吾当安之(さんがいかいくごとうあんし)」と説法されたという話です。
 もちろん実話ではないでしょうが,この天上天下唯我独尊という言葉を勝手に、全宇宙でただ私一人だけが尊いと読みとってしまう間違いが多いようです。
 天上天下唯我独尊は「この全宇宙の中で私たちは皆たったひとつの存在で尊い」と読み取り,三界皆苦吾当安之は,「この世はすべて思い通りにならないことばかりなので,今から私がそれを安らかにするでしょう」という意味であるとされています。

 浄土真宗になじみのあるお経の「仏説阿弥陀経」には「青色青光 黄色黄光 赤色赤光 白色白光」とすべて平等にそれぞれが尊い輝きを放つのだと説いてくださっています。

 浄土真宗の教えを大切にした詩人として有名な金子みすゞさんの「私と小鳥と鈴と」という詩もその平等でそれぞれの尊い輝きを表現しています。
私が両手をひろげても
お空はちっとも飛べないが
飛べる小鳥は私のように
地面じべたを速くは走れない
私がからだをゆすっても
きれいな音は出ないけど
あの鳴る鈴は私のように
たくさんな唄は知らないよ
鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがって、みんないい

 現在の格差社会では勝ち組負け組に分けられ,勝った負けた,成功した失敗したと色分けされて,仏法で説かれている尊いそれぞれの輝きを認めにくい社会の空気があります。

 今一度,2500年前のお釈迦様の教えである,皆たったひとつの存在で尊いのだという人間に対する公平な目線を大切にしたいと思うところであります。

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