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少欲知足

先日、読んでいた小説の中で、結婚する娘に母親が言ったこんな台詞がありました。
「別にそんなに幸せになろうとしなくていいのよ。幸せにならなきゃと思い詰めると。ちょっとの不幸が許せなくなる。少しくらい不幸でいい。思い通りにはならないものよ」

 仏教では煩悩を捨て去り「無欲」である事を大切な教えとして説いています。しかし、それは「すべてのものを捨ててしまえ」という教えではありません。そんなことをすれば生きていくことができなくなります。無欲とは「必要以上に欲しがらない」ことなのです。

 お釈迦様が亡くなる前に説かれた「(ぶつ)(ゆい)(きょう)(ぎょう)」には「足ることを知っている者は、地べたに寝るような生活であっても幸せを感じている。しかし足ることを知らない者は宮殿のような所に住んで裕福であっても満足できず心は貧しい」とあります。

 この教えを「(しょう)(よく)(ち)(そく)」と言います。

 今まさに、何もかもが豊かすぎる時代。考えてみると、私たちには衣食住に関わる多くの物が与えられています。けれども、国際調査機関の幸福度調査によると、日本の幸福度は先進国の中で最下位だそうです。

 それに対して、小さな国ですがブータンでは「あなたは幸せですか?」という質問に97%の国民が「幸せ」と答えています。この国では、徹底して物質的な満足が必ずしも幸福につながらないと主張し続けてきているそうです。

 最初に紹介した小説の中の母親は「少ない幸せでも足るを知れば幸せなのよ」と娘に教えていたのかもしれません。

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